新社会人へ(社会保険編⑤ 業務上の災害からあなたを守る労災保険)

労働者が仕事をしている最中に怪我をした場合に労働基準法でその治療代や休業中の所得を保障することを義務づけていますが、事業主が必ずしもその昔にを果たすことができるとは限りません。そこで労働者に対する補償が確実に行われるようにするために保険制度したものを「労災保険」といいます。(保険とは、たまたま起こる事故のためにみんなでお金を出し合ってお金を貯めておき、不幸にも事故にあった人のために、そのお金を使って助けてあげること言います。)

 

労災保険は基本としてすべての事業主が強制的に加入する義務を持っており、これによって労働者の災害に対するリスクが軽減されることになります。(強制的に加入する必要のない事業主は個人経営の農林水産業等に限定されています。)

労災保険によってカバーされるリスクは労災にあった本人のステージによって

①傷病給付(治る前)

②障害給付(治った後障害が残った場合)

③死亡給付(死んでしまった場合)の3つに分けられます。
それぞれ簡単に見ていきましょう。

 

①傷病給付
このカテゴリには怪我をしたり、病気になったときに直接的に治療にかかってくる費用が含まれます。これに加えて怪我や病気になったときに働けなくなった場合、所得補償を受けることができるようになります。所得補償については労災を受けた本人の所得水準を決められた方法で計算をして、同金額の100分の60が給付されることになります。怪我や病気が1年6カ月以内に完治する場合にはこの給付で生活をすることができます。

さらに、病気や怪我の完治が遅れ1年6ヶ月以上治らなかった場合、かつ特定の障害状態(傷病等級1級から3級)に該当する場合には「年金(1年間にいくらと言う形で安定して支給される金額)」に切り替わって給付を受けることができます。

 

②障害給付
病気や怪我の治療が終わり症状が安定したものの障害が残ってしまう場合には、その不自由を補完するために年金や一時金が支払われます。
障害状態が重い場合(具体的には障害等級が1級から7級の場合)には年金として1年に決まった額が支払われますが、障害状態が軽い場合(具体的には障害等級が(8級から14級)の場合には一時金として支払われます。

 

③死亡給付
労働災害によって労働者が死亡してしまった場合、残された家族に対して年金という方式で安定した所得の補償が行われます。基本のシナリオとしては夫が労働者として働いていることを前提としており、妻に対する年金給付となりますが、これに加えて子供や孫(18歳に到達するまで)、さらに労働者の兄弟姉妹、父母祖父母についても一定年齢(現場55歳)を超えておれば「死亡した労働者に経済的に依存していた」と言う整理で年金が給付されます。

 

上記を勘案して新社会人が覚えておくべき労災保険の関連事項は以下に纏めます。


+ポイント❶

労働者が業務上の理由で「怪我や疾病での通院入院」、「障害」、「死亡した場合の遺族のケア」については労働基準法で一定の保証がされ、かつ対象事業主がこれを遂行できない場合には、ほぼ強制的に保険のシステムでこれがカバーされていることになる。従い自分で保険(生命保険、医療保険など)を購入検討する場合には、この分がカバーされていると言う前提で考える方が得策である。


+ポイント❷

逆にこれからの時代の新入社員が考えておかなければいけないのは、フリーランスや独立して事業行う場合。個人事業主の農林水産業を除いては労災保険加入が義務、また中小事業主や一人親方(個人タクシーや大工さんなど)、海外派遣者に対しても労災保険は加入することができる。しかし独立やフリーランサーとなった場合はこれらが義務ではないことから、加入の方法や補償に対して理解をしておくべきだと思います。


+ポイント❸

雇用保険も含めて労災保険は「労働保険」と呼ばれ、その保険料は労働保険徴収法に定義されているが基本的に労働者からの負担はなく、事業主が全額負担することになっています。また国からの支出については「国家補助(義務ではないが補助ができる)」と言う形で「費用の一部を国が予算の範囲内で補助することができる」と言う決まりになっている。この観点からも労災保険に加入している労働者は国の税金でも守られていると言うことができます。