新社会人へ(社会保険編⑦ 病気や怪我からあなたを守る健康保険

a)そもそも健康保険とは

そもそも健康保険は業務外で起こり得る疾病、負傷、出産、死亡についてのリスクを保険のシステムでカバーするものです。

新社会人が、どのような雇用形態であるかによって、保険者とシステムが変わってきますので、最初にこれらを分類すると以下の3つに大別してされます。

f:id:shuhei1972:20200322064422j:plain

「組合健保」と「協会健保」については一定の規模超える事業者(主に個人事業主で従業員5人以下が対象外)については強制的に加入することとなっています。

ざっくり言うと大企業サラリーマンは「組合けんぽ」、中小企業のサラリーマンは「協会けんぽ」、自営業は「国民けんぽ」と覚えてください。

 

f:id:shuhei1972:20200322093933j:plain

b)保険料の負担
保険料の負担については以下のように「健康保険(組合健保と協会健保)」と「国民健康保険」の2つに大別されます。
+健康保険(組合健保と協会健保)
健康保険については「標準報酬月額」と呼ばれる月収、これに加えて「標準賞与額」と呼ばれるボーナス見合いの金額をプラスし、この金額を前提に一定の保険料率(現在は0.3%〜1.3%)をかけて算出され、一般の被保険者の場合には労働者と事業主で半分ずつの負担となります。
これに加えて「国庫負担」及び「国庫補助」と言う名目で税金による費用の補填が国からなされます。
一方でこれらの健康保険の財源は「高齢者医療」及び「介護保険」に対する費用にも使われることになっており、これらが増加することが確実視されています。

+国民健康保険
国民健康保険の保険料を調べてみたところ市町村ごとに異なる料率が設定されています。これは地方自治体によって医療サービスの実態が異なる事が背景ですが、以下に1番分かりやすかった茅ヶ崎市の事例を引用しました。
ざっくり11%に定額の均等割、平等割が入る決して低い保険料とはなっていません。

 

f:id:shuhei1972:20200322065118j:plain

上記の保険料に加え様々な形で国庫負担(税金)で全体の費用の50%が負担されることになります。

国民健康保険は高齢者や低収入の国民が多数加入していることから、国庫負担が厚く、それでも財政収支を安定させるために収入のある人に対する保険料率は高めに設定されています。

 

c)保険金の支払い(保険により担保される内容)
大まかに言うと①病気や怪我の治療費、②入院した場合の費用(食事代を含む)に、③怪我や病気で仕事ができなくなった場合の休業補償、④死亡、出産、⑤高額な医療を受けた場合の一定限度以上の支払いの免除、などが挙げられます。

このうち新社会人の皆さんが覚えておいた方がいいと思うものを補足説明しておきます。

まず病気や怪我の療養費については基本は「3割負担」と覚えておいてください。小学校入学前のお子さんや70歳以上のご老人は「2割負担」となっていますが、ご老人の医療費の高騰から収入のあるご老人は3割負担になっていく流れかと思います。

また怪我や病気で仕事ができなかった場合の収入補償ですが(傷病手当金といいます)については直近の12ヶ月の給料の3分の2が1年6ヶ月にわたって支給されます。ご自身で保険を購入検討される場合には、これと重複して補償を買わぬよう注意しておいてください。

国民健康保険(自営業者、高齢者が中心)の場合には傷病手当金や出産手当金の給付がない自治体がありますので、ここは注意しておく必要があります。ただし、それ以外は健康保険と大きく違いはありません。(例えば療養費の給付は3割負担であることなど)

ここで一旦、脇道に逸れますが社会保障の給付と負担の現状を記載しておきます。厚生労働省のHPの資料から簡単に整理しておきましょう。

 

ざっくり言うと社会保障費で年間120兆円が必要とされており、そのうち①年金で55兆円、②医療(健康保険)で40兆円、③福祉や介護で25兆円の支出となっています。国内総生産に占める給付費の割合(国民負担率)は21%であり、前年対比若干の下落、ただし2009年以降は20%を超える数字が続いています。

一方で収入のほうは保険料と税金で141兆円となっており、ざっくり6割(90兆円)が保険料でまかなわれており、残りの50兆円は税金で。(ちなみに日本の2019年度の国家予算は約100兆円であり、そのうち税収で賄えるものが70兆円弱、残りの30兆円余りは国債の発行で賄っています。)

 

最後に新社会人が常識として覚えておきたい3つのポイントを列挙します。

+ポイント①

健康保険は雇用形態において3つに大別される。ざっくり言うと大企業サラリーマンは「組合けんぽ」、中小企業のサラリーマンは「協会けんぽ」、自営業は「国民けんぽ」と覚えてください。

 

+ポイント②

病気や怪我の療養費については基本は「3割負担」と覚えておいてください。

また怪我や病気で仕事ができなかった場合の収入補償ですが(傷病手当金といいます)については直近の12ヶ月の給料の3分の2が1年6ヶ月にわたって支給されます。

これらが「民間医療保険が不要」となる根拠です。

 

+ポイント③

健康保険の財源は「高齢者医療」及び「介護保険」に対する費用にも使われることになっており、これらが増加することが確実視されています。

知らないうちに徴収されている(?)これらの金額により、新社会人の給与所得は確実に減っていくと思います。